誤訳されなきや有名にならなかった言葉って

運動会の開会宵言などで、よく引き合いに出される格言に、「健全なる精神は健全なる肉体に宿る」というものがある。


スポーツで体を鍛えることの大切さを説くのによく使われるが、病気がちの人や体の不自由な人にとってはずいぶん失礼で差別的な言葉だ。


この言葉、古代ローマの詩人ユウェナリスの詩からとったものとされているが、じつは、ユウェナリスはそんな詩をつくってはいない。ほんとうは彼の詩ではなく、彼の詩の誤訳がら生まれた言葉なのである。


ユウェナリスの詩にあるのは、「賢者が神様に願うのは、健全なる身体の中に健全なる心」。つまり、心身両方の健康を願う言葉だったのである。


それが、この詩を翻訳した人が、「健全なる精神は健全なる肉体に宿る」と誤訳してしまい、それがきっかけで、そのままこの言葉が広まったのである。